ことばの力   

 

先日、30歳を過ぎた息子の幼少期の言語録が出てきました。

学問的な興味というようなものではなく、

日記代わりにつけていたものです。

ある日の記録。

息子3歳。

 「夏休み。私も〇〇(息子の名前)も二人きりの時間を持て余している。

『ねえ、母さん、これやって』『ねえ母さん、公園行きたい』『ねえ母さん、・・』

朝から〇〇の『ねえ母さん』を何回聞いただろう。疲れた。

『〇〇くん、もう、母さん母さん言うのやめてよお』と半ば怒り気味に言う。

すると○○は、首をかしげて考えて

『ねえ、りーえー(りえは私のファーストネーム)』

『あー○○くん、いいよ、母さんで(大笑い)』」

今では、私の「ねえ○○くん」にすかさず「自分でググって」と取り付く島もない息子。

子どもの言葉は成長とともに変化し、消えてしまいます。

でも記録があれば、後から読んだときには、昔を思ってわが子のすべてを許します。

そんな力が消えていく言葉にはあるのです。

                                             宮武

「岡崎げんきっ子新聞(202211月号原稿)



宮武 里衣

宮武 里衣

愛知学泉大学 家政学部こどもの生活学科 教授。高校の国語科教員として30年ほど勤務し、縁あって現在は小学校の教員を養成する大学で「国語科教育法」などを中心に指導しています。高校生、大学生の「国語」の指導を通して、言葉の育ちは幼少期から螺旋的につながっており、特に幼少期の言葉への関りがその後の言葉に獲得に大きく影響していることを感じています。子どもの周りにいる大人が、少しでも子どもの言語環境に敏感になってくれたらいいなと考えてこの活動を始めました。保護者の皆様方もお子さんと一緒に楽しんでくださったらうれしいです。

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